既存の有限会社(特例有限会社)はどうなるの?

有限会社は株式会社に一本化

会社法の施行により、有限会社法は廃止され、現在は新たに有限会社を設立することはできなくなりましたが、既存の有限会社は、「有限会社」という商号をもったまま、「株式会社」として存続することになります。
これを、特例有限会社といいます。

つまり、既存の有限会社は、『特例有限会社』として今までどおり事業を行うこともでき、一定の手続を踏む事で『株式会社』に移行することもできることになりました。

お、これまでの有限会社にあたる規模の会社を設立したい場合は、それに類似する形の株式会社を設立することになります。

通常の株式会社との違い


・商号中に「有限会社」の文字を使用しなければならない。
・発行出来る株式は、譲渡制限株式のみなので、公開会社になることはできない。
・株主総会・取締役以外の機関として監査役が置けるが、会計監査のみに権限が制限される。
・取締役・監査役の任期に制限がないので、休眠会社のみなし解散規定は適用されない。
・決算公告の義務がない。
等があります。

  既存の有限会社(特例有限会社)の注意事項

■ 用語の読み替え
特例有限会社の『定款』の文言は、原則、株式会社の規定が適用されることになりますので、次のように読み替えがあるものとして取り扱われます。 これは、定款を変更していなくても、当然に読み替え後の記載があるものとして取り扱われます。 
「旧有限会社の定款」→「株式会社の定款」 
「社員」→「株主」 
「持分」→「株式」 
「出資一口」→「一株」
「社員名簿」→「株主名簿」
「社員総会」→「株主総会」

【取締役・監査役について】 
有限会社の場合、取締役は1人で構いませんし、監査役の設置は任意です。 
監査役を置いた場合でも、監査役の権限は会計監査に限定されています。
特例有限会社の場合、この内容がそのまま維持されることとなります。 
有限会社の場合、取締役・監査役について、任期の規定はありません。 新会社法における株式会社には原則として取締役の任期は2年(非公開会社の場合は10年まで伸長可能)、監査役は4年(非公開会社の場合は10年まで伸長可能)という規定があります。 特例有限会社の場合は、取締役・監査役の任期についてこれまで通り、期限がないものとされます。 

【株主の権利について】 
これまでの有限会社において、社員の議決権の数や行使事項、利益の配当や残余財産の分配について特別な定めをしていた場合、特例有限会社でも、それらの定めがある種類株式が発行されているとみなされます。有限会社の場合、総会招集請求権や帳簿閲覧請求権などは、原則として総社員の10分の1以上が必要です。これに対して、株式会社では、総株主の議決権の100分の3以上が必要です。特例有限会社の場合は、これまで通り、総社員の10分の1以上あればよいことになっています。 

【公告について】 
有限会社の場合、会社の公告方法についての一般的な規定は存在しません。そこで、特例有限会社、原則として、会社の公告方法は官報に記載する方法をとるものとされます。
ただ、これまでの有限会社会社が合併などの場合の公告方法として、別の定めをしていた場合は、その定めたものを会社の公告方法とします。 
有限会社の場合、会社の計算書類に関して、会社に備え置き公告する義務はありませんが、株式会社では、その義務があります。 
特例有限会社の場合、これまでどおり計算書類に関しての公告義務はないとされています。


  株式会社との違い

特例有限会社
株式会社
役員の任期
任期なし
原則として
取締役の任期は2年
監査役の任期は4年
(非公開会社の場合は任期が10年まで可能)
計算書類の公告
不要
必要
取締役会
設置できない
設置できる
監査機関
会計参与・会計監査人を設置できない
会計参与・会計監査人を設置できる
株式譲渡制限全ての株式について譲渡制限の定めがあるとみなされます(ただし、株主間の譲渡を制限することはできません)株主間の株式譲渡も制限できる
組織再編・吸収合併の存続会社、吸収分割の承継会社にはなれない
・株式交換、株式移転はできない
制限なし

特例有限会社であることのメリットと注意点

メリット 
(1)役員の任期は無制限 
役員変更登記の手間、費用(登録免許税1万円)は必要ありません。
会社法においては、株式会社の役員の任期は、原則、取締役は2年、監査役は4年となっています。
株式譲渡制限会社では、定款で定める事によって最長10年に延長する事もできます。 
特例有限会社の場合では、役員(取締役・監査役)の任期は無く、無期限となっていて、任期ごとに役員の変更登記が不要です。 
(2)計算書類の公告が不要 
計算書類の公告を行う必要がありませんので、公告費用や労力を抑えることができます。 (3)商号変更によるさまざまなコスト、労力がかからない 
商号(社名)が、「○○有限会社」から「○○株式会社」に変わると、名刺、看板、封筒、社判、取引先などへの名称変更の知らせなど、日常的なものから、会社代表者印なども作り直す必要がでてきます。また、税務署、労基署、ハローワーク、社会保険事務所などへの変更の届出も必要となります。 

注意点 
(1)信用性
これまでのように、株式会社に比べると、小規模な会社といったようなマイナスの捉え方をされる場合があります。 
(2)株式譲渡制限の定めを変更できない 
特例有限会社は、第三者に株式を譲渡する事について、会社の承認を要し、譲渡自体に制限をかける事ができますが、株主間での譲渡については、制限することはできません。 
株式会社であれば、株主間の株式譲渡についても制限をかける事ができますので、株主間での持分比率が会社の知らない内に変動してしまうことを防ぐことができます。
(3)取締役・会計参与・会計監査人などを設置できない 
特例有限会社で設置できる機関は、「株主総会」 「取締役」以外に「監査役」のみです。 株式会社のように、「取締役会」「会計参与」「会計監査人」などを設置することはできません。


当事務所では「特例有限会社」における変更登記手続きの代理を行っております。

特例有限会社は、その変更登記手続きの流れ、書類、登録免許税なども株式会社とほぼ同一です。

当事務所は、株式会社のみならず、特例有限会社の変更手続きにおいても株式会社と同様の手数料で承っております。 特例有限会社でもあっても、何ら他の株式会社と異なることはありませんので、登記でお困りの際はお気軽にご相談いただければと思います。

特例有限会社から株式会社への移行をお考えの方も、事前に相談を受けておきたい場合は、無料で相談を承っております。